ロケーション、 ロケーション、 ロケーション

最適な住処を見つけることは、東京を楽しむ鍵となる

東京に着いたばかりの外国人が、迷うことなく最適な住処を見つけることは、難しいことであろう。多くの外国人は、思い描いていたのとは違う場所に住むことになったり、住み始めて数ヶ月もしないうちに狭苦しい家の居心地の悪さを感じたり、周りにコンビニ以外は何もないような場所に住む羽目になったりする。

しかし、東京とその周辺は、実は場所を選びさえすれば、住むのに最適であったりもする。一晩中パーティーをしたい人も、緑の中でリラックスしたい人も、気の済むまで買い物を楽しみたい人も、洗練されたおしゃれな場所で食事を楽しみたい人も、東京にはそれぞれに最適な場所がある。

渋谷

長いこと文化の発信地と言われ続けてきた渋谷であるが、ここ最近は、景気の悪化で、街にあまり元気がない。レコード店のHMVなど有名な店やバーが閉店し、渋谷を住処に選ぶのは迷うところだ。しかし、渋谷について語らなければ何も始まらない。

「渋谷には20代の若者が多く住んでいます」渋谷に住む28歳の営業マンのジョージ・スズキさんは語る。「他の区と比較すると、家族で住む割合は低いですね。物価が高いですから。安いスーパーもあまりありません」

一方で、隠れ家的レストランやおしゃれな服屋、裏通りに面した洗練されたバーなどは数多い。また、渋谷は、通勤者にはとても便利な場所である。渋谷駅発の列車が多く走っているからだ。山手線を除けば、ほとんどの路線で座ることができる。青山、原宿、代官山は徒歩圏内であり、おしゃれを好む人にとって、渋谷の人気は根強い。

「渋谷に住むことは、社交的な生活を維持することを意味します。新しい人たちとの出会いも多いので、東京での生活を思う存分楽しむことができるでしょう」と、スズキさんは言う。「代々木公園にも近いので、週末に都会の喧騒から離れた時間を過ごすことができます。代々木公園では楽しいイベントも多いです。ただ、リラックスするには、騒音が難しくさせているかも知れません」

六本木・広尾

東京の中でも六本木は、夜が長いことで有名である。数々の事件も起きている。ロバート・ホワイティング氏が著した

『トーキョー・アンダーワールド』では、何よりも六本木の存在の大きさを描いている。それには、理由がある。六本木は、土曜日の夜にしばしば見られる乱痴気騒ぎで有名だ。しかし、六本木には別の顔もある。おしゃれな高級レストランや洗練された店も多く、広尾に近いため、国際的なコミュニティーが存在する場所でもある。「六本木や広尾は、東京の中でも国際色豊かな場所です。親日家にとって、これだけ外国人が多い場所には驚くでしょう」六本木・広尾周辺に住み、リクルーターとして働く20代のノルウェー人、ヴィダー・アナンドセンさんは言う。「通りで外国人を見かけても気にならない人には、小さい子供のいる家族から学生まで、魅力的な街と言えるでしょう」

六本木は、望めば何でも叶う街である。いたる所にある外国人のたまり場に行って、酔うまで飲み続ければ、飲み屋を出た後には悪い記憶が残るか、まったく記憶がないか、二日酔いに大抵はなる。一方で、六本木には、ショッピングに最適な六本木ヒルズや東京ミッドタウンがある。また、東京でも必見の展覧会を開催している美術館があり、外国人向けのスーパーがあり、映画館や高級レストランも数多く建ち並ぶ。これだけのものが揃えば、六本木周辺の家賃が高いことも理解できるだろう。そして、お金を湯水のように使うかは、あなた次第だ。

「丘にある小道や低層の建物が多くあるこの街が好きです。散歩するのに楽しい場所です。おしゃれなバーやレストランが多いことも気に入っています」と、アナンドセンさんは言う。

下北沢

下北沢には、多くのレコード店、クラブ、ライブハウス、安価なレストラン、古着屋があり、学生に根強い人気の街である。

下北沢に住む人々は、学生から長期滞在の外国人、アートや音楽を職業とする人たちなど、流行に敏感な人が多い。土曜の夜に、作家とグラフィック・デザイナー、20代の酔っ払った若者が会話を交わしていたとしても、驚くことはない。六本木や渋谷には高級志向が漂うが、下北沢には独特の文化と「街の中にある小さな街」という雰囲気が漂う。

「のんびりとした性格の人には、住むのにぴったりの街と言えるでしょう」下北沢に住む会社員のムラノ・ユウコさんは言う。「どこに行くのにも便利だし、古い建物と新しい建物が混在して立ち並ぶ下北沢には、独特の雰囲気が漂います。小さなお店がたくさんあるので、夜に退屈することはありません」

下北沢に住むのに、難点が一つある。住民にとって残念なことに、高速道路が街を突き抜けて建設される計画があるのだ。

東京郊外

東京の都心に住むのは便利である一方で、難点もある。常に人で賑わい、物価も高く、ネオンの明かりが点滅するという点は、東京の都心に住む住人から良く聞かれる不満である。しかし、日本の素晴らしさは、少し都心を離れれば、美しい田舎の風景が広がり、農業を営める環境もあるということだ。バブルの崩壊後は、地価の値下がりも見られ、手の届く価格となっている。

千葉県我孫子市に住む会社経営のパトリック・リンチ(39歳)さんは、語る。「土地も家屋も都心に比べると安いです。東京では実現の難しかった一軒家を持つということが、ここでは実現できました。空や植物や緑を楽しむことができます。家から徒歩5分のところに湖もあります。空気は澄んでいて、木々も心なしか都会よりも元気に見えます。でも、郊外に住んで一番良かった点は、隣近所の人たちと顔馴染みになれることです。ここでは、人の数は少ないですが、東京でマンション暮らしをしていた時には感じられなかった、人と人との交流があります」

シェリフさんは、郊外での暮らしは東京に比べると多少なりとも退屈であることを認めるものの、都心に引っ越す気はまったくないと言う。「東京で過ごした日は、我孫子に帰ってくると、人ごみから抜け出た解放感があります」

中央線沿線

ジブリ美術館や数多くのライブハウス、公園、古着屋、飲み屋があり、音楽好きを惹きつける街々がある中央線沿線は、若者から年配の方まで人気がある。若い家族、学生、サラリーマンたちが、立ち飲み屋でひしめき合いながら飲む姿や地下にあるライブハウスで音楽を楽しむ姿があちらこちらで見られる。

武蔵境駅に住む語学学校経営者のアレックス・コックス(31歳)さんは、中央線沿線にある駅周辺に住み始めてから3年が経つ。必要なものは何でも揃うこの場所は、都心に近いながらも、都会の喧騒から離れた解放感に浸れるという。

「武蔵境は緑豊かな場所で、若い家族が住むのに最適だと思います。通勤の便も良く、学校や病院、スーパーやレストランが数多くあります」

とはいえ、中央線沿線に住むのに、難点もある。物価の上昇があり、また、中央線の電車は頻繁に止まることで有名で、通勤客はすし詰め状態となる。「中央線沿線に住む人口の多さから、アパートの価格は値上がりしました。電車もいつも混んでいます」

しかし、そのような難点があっても、住む快適さの方が勝るとコックスさんは言う。「緑の中でリラックスできると同時に、少し足を伸ばせば都会の夜も楽しめるところが気に入っています」

From J SELECT Magazine, January 2011
[訳: 青木真由子]