宮坂絵美里

ただ可愛いだけじゃない

人気モデルと会う機会を得た人の多くは、何を話したら良いか、どのように会話の糸口を見つけたら良いか、どのように貴重な情報を得たら良いか、少なからず戸惑いを覚えることであろう。大抵は、ステレオタイプのモデル像を想像するかも知れない。あるいは、大変喜ばしいことなのに、会う前は少し憂鬱となるかも知れない。場合によっては、想像していた通りの人が現れるかも知れない。

2009年ミス・ユニバース・ジャパン優勝者である宮坂絵美里と会う機会を得た幸運な者は、差し向かいで話ができる喜びに震える思いであろう。ステレオタイプなモデルの印象などは、どこかに払拭され、彼女の語学力に深く感嘆することであろう。彼女は、高い英語力を誇り(幼少の頃、カリフォルニアで一年を過ごした)、スポットライトが当てられた時に、多くの観衆を惹きつける魅力がある。たとえ、取り巻きのカメラマンが彼女の周りをうねるように動いたとしても、だ。

彼女は、ドキュメンタリーものよりも映画を好み、ノンフィクションものよりも勇敢な小説を好む。そして、早朝よりも深夜を好む。私の矢継ぎ早な質問に、彼女は優しく答えてくれた。今や宮坂絵美里は、半年に一度開催される東京ガールズコレクションの人気モデルの一人と言えよう。モデルに観衆(その多くは女性である)の黄色い歓声が響く、あの人気の高いイベントだ。弊誌の2010年7月号でも取り上げられた。

宮坂絵美里の2009年ミス・ユニバース・ジャパンの優勝は、3000人の応募者の中から勝ち取ったものだ。その模様は、彼女のホームページでも見ることができる。緒方義志(よしゆき)氏のデザインで、ミス・ユニバース世界大会で着用したナショナル・コスチュームが物議を醸したが、ミス・ユニバース・ジャパンの優勝により、彼女は一躍脚光を浴びた。その後、若い女性たちが一度や二度は憧れる広告やモデルの世界で活躍を続けている。テレビのコマーシャルや街のビルボードで彼女を目にすることができる。また、国内のテレビ番組にレギュラー出演しており、衛星放送のスカパー!でも、その姿を見ることができる。

板井麻衣子が、2010年ミス・ユニバース・ジャパンに優勝した後も、宮坂絵美里の勢いは止まらない。麻生首相(当時)を表敬訪問したことは、ファンの間では誉れとなっている。

宮坂絵美里は、たおやかに腰掛けた。ファッションショーが行われたバックステージでの取材となったので、場所は限られていた。私、マーク・バクトンと東京で活躍するファッション・フォトグラファー、クリストファー・ジューが取材した。取材にありがちなステレオタイプな質問は避けたところ、彼女の好みを知ることができた。例えば、タイ料理よりもパスタ料理が好き。旅行に行くのは、アメリカよりもヨーロッパ。映画『オースティン・パワーズ』よりも泣ける映画『タイタニック』が好き。早朝よりも真夜中が好き。そして、ヒップホップよりもジャズが好きだそうだ。

ジェイ・セレクト・マガジン(以下、JS): モデルの仕事を始めたきっかけは何ですか。

宮坂絵美里(以下、EM): 2009年のミス・ユニバースに応募してからは、何だかすべてが、「起こって」しまった感じです。

(C) Leslie Kee

JS: さいたまスーパーアリーナで行われた東京ガールズコレクションでは、人気のあるLovedroseなどのブランドのモデルをされましたが、ランウェイから離れて友達と過ごす時は、どのような服装を好みますか。

EM: シンプルな服が好きです。白いTシャツにショートジーンズを履いたり。あとは、ビーチスタイルが好きですね。(取材当日に身に着けていた服については、熱心に語ってくれた。カーディガンを羽織り、腰のところをベルトで留め、シンプルさを強調した服装であった。)

JS: あまり好きではないファッションはありますか。

EM: ロリータファッションは好きではありません。フリルの付いたアクセサリーや可愛過ぎるもの、ガーリー過ぎるものは好きではありません。自分のスタイルではないと思うからです。

JS: スタジオやキャットウォークから離れて、仕事以外の自由な時間をどのように過ごすのが好きですか。

EM: 特に映画を見るのが好きです。夏は海に行くのが好きです。あるいは、忙しくない時は、ドライブするのも好きです。

JS: リラックスするのに好きな東京のエリアはありますか。

EM: 恵比寿が好きです。食事をするのに良い場所ですね。でも、それ以外は・・・。

JS: ミス・ユニバース・ジャパンの優勝者が、普通に外出することは可能ですか。ファンやサインを求める人たちに囲まれたりしませんか。

EM: 大抵は大丈夫です。特に大きな問題はありません。東京は、その点、素晴らしい街です。

世界的に名を馳せることについて話題を変えると、意外なことに、海外で仕事をしたり住んだりすることにそれ程興味がないという。可愛いしかめ面をしながら、「別に」と答えるその声には、信念が備わっており、その答えが長いこと熟慮した結果のものなのだとわかった。それは、ミラノやパリ、あるいは、死について質問された時にも変わらなかった。

モデルの仕事を引退した後のことに質問が及ぶと、「結婚して、幸せな家庭を築きたい」という元気な答えが返ってきた。将来の頂点を極めた後の引退は、多くのファッション誌やメディアに、トップ記事として取り上げられるだろう。

取材の締め括りに、会話による変化球を投げてみた。私が、「死んで、生まれ変わったとしたら、何に生まれ変わりたいですか」と尋ねると、彼女は目を大きく見開き、ミス・ユニバース・ジャパンの冠を付けた者に誰が想像するだろう、短くこう答えた。「男性です」

彼女は、額に皺を寄せながら、そう答えたのだ。そして、その理由として、次のように語った。「男性はいつでも自由で大胆でいられます。時には、女性とトラブルを起こすこともあるかも知れません。男性の方が、女性より多くのことができると感じます。そして、男性の方がその行動に広い可能性を持っています」

彼女は控え室からiPhoneを取り出し、モデル事務所の連絡先を教えてくれた。すると、彼女の質問に受け答えする真摯な態度が思い出された。彼女は、「あらゆるもの、あらゆる人々に感謝する」気持ちをモットーとしている。大らかな性格をしている一方で、自分自身については、時に真面目になり過ぎてしまうことがある。

日本のブランドやファッションショー、ファッションマガジンは、この宝石のような彼女を放っておくことはないであろう。

彼女のブログも是非見て頂きたい。https://ameblo.jp/miyasakaemiri/

宮坂絵美里プロフィール

生年月日: 1984年6月16日
出身地: 東京
身長: 171cm
目の色: 茶色
髪の色: 茶色
準ミス・インターナショナル日本代表第3位、2009年ミス・ユニバース・ジャパン代表。

Story by Mark Buckton
From J SELECT Magazine, January 2011
[訳: 青木真由子]