古から続く奈良の伝統的な食文化「食でめぐる奈良~奈良の食文化にふれる旅~」

新橋にある奈良県のアンテナショップ奈良まほろば館」の2階にあるレストラン「TOKi」で、奈良の伝統的な食材を使った食文化体験をしてきました。

TOKi」は「ミシュランガイド東京2024 」に一つ星として掲載されており、食材はもちろんの事、椅子やテーブル、照明などの調度品も全て奈良県産、インテリアも奈良県のデザイナーが手がけています。

 

TOKi」のオーナーシェフ 川島 宙氏は、東京のホテル西洋銀座、関東や関西のホテル・レストランで、長年フレンチの料理人として活躍。34歳の折、「独自の世界を目指して」スペイン・バスク地方へ渡り、モダンスパニッシュの名店「ムガリツ」で経験を重ね、自らの料理世界を深化。2008年、奈良県に「アコルドゥ」を開業しました。「奈良まほろば館」のレストラン「TOKI」も監修しています。

奈良県は飛鳥時代より宮都が置かれた歴史が古い県です。日本最古の神社や日本酒の発祥の地も奈良県にあります。食文化もその歴史と同じく、奥深く、独自の文化があります。「大和野菜」と言われる奈良県に伝わる伝統野菜、鎌倉時代から受け継がれる銘牛「大和牛」など、その魅力は計り知れません。奈良県には、オーベルジュが多くあり、ガストロノミーツーリズムに力を入れています。

イベントでは、奈良県の伝統、古道の巡礼の歴史などを織り交ぜた、川島シェフが創り上げた独特な食の世界観に圧倒されました。

大和橘のインフーション

日本の最古の柑橘類で、日本の固有種とされる「大和橘 (やまとたちばな)」。橘は、2000年もの昔、垂仁天皇の忠臣・田道間守(たじまもり)が、常世の国から不老長寿の妙薬として持ち帰ったという伝説が残っています。香り、常緑の力、種子が多いことから子孫繁栄の象徴ともされ、特に女性を人気がありました。血の巡りをよくして、冷え性や血行不良などに効果があると言われています。「万葉集」に70首も詠まれています。この数年で準絶滅品種だった大和橘を復興し、地域活性にも貢献しています。
大和橘の青葉を低温でゆっくりと煎じたお茶のようなインフーション。全てをリセットし、浄化するような印象の香りで食事をスタートします。

宇陀のサフラン 大和橘麺 ホタテといせ弥奈良漬けのタルタル

大和橘を練りこんだ手延べの麺には、スペインを連想する素材『サフラン』のソースを合わせ、彩りも香り豊かな麺に仕上げています。帆立貝のタルタルには、森野吉野葛本舗(森野旧薬園)と同じ道にある「いせ弥』の奈良漬けを加え、日本らしい香りと風味を加え、コリッとした食感が良いアクセント。ホタテはスペイン北部、巡礼の道の道しるべにも使われており、寺社が多く神聖な印象がある奈良と繋がりを感じるとシェフは語ります。上に添えられたバジルが、完成度をあげています。

 

 

宇陀の酒と大和当帰のアロス 大和牛のアサード 伽耶の実

低温でしっとりとローストした大和牛は柔らかくジューシー。体に良いといわれるオレイン酸が豊富で脂肪の口溶けがよく、風味が豊かな味わいのあるお肉です。奈良・郡山で育った米、ヒノヒカリで炊いた米の煮込み『アロス (スペイン語で「米」の意味) は、大字陀に所在する久保酒造の日本酒と大和当帰の風味を加えています。

「大和当帰 (やまととうき)」は奈良県産の代表的な薬草です。当帰(とうき)はセリ科の多年草本で、奈良県を主とし、日本各地の薬園で栽培されてきました。セロリと似た印象のある大和当帰の香りは、生薬が持つ独特さが料理に奥深さを加えます。

香ばしい「伽耶の実 (かや)」は「和製アーモンド」とも言われ、爽やかな渋みを感じる独特の風味が特徴です。伽耶の実から取れる油は大変貴重で、昔は年貢として収められていたとか。

タルタ・デ・サンティアゴ 甘草のエッセンスとジェラート 大和ほうじ茶のKUZU

タルタ・デ・サンティアゴは、スペイン北部の伝統的なアーモンドと香辛料を使った焼き菓子です。奈良県にも古くから、香辛料や薬草の歴史がありました。

奈良県中部の町、天理でも栽培がされている「甘草(かんぞう)のソースを合わせています。「甘草」は砂糖の数十倍の甘さがあるとされる、甘み成分のグリチルリチンを含んでいて、英語名では「リコリス」、スペインでも好んで使われています。奈良産のほうじ茶は、吉野の名産である葛粉でピュレ状に仕上げています。焼き菓子、ジェラード、葛粉と、その全体が合わさる事により、日本人がよく知っている味わいの印象が生まれます。一品目の帆立貝の話にまつわる、巡礼の道のストーリーとの繋がりを感じさせたデザートです。

奈良の食文化にふれる旅では、奈良県の魅力を再発見しました。
「ミシュランガイド奈良2023」にて二つ星を獲得している「アコルドゥ」に訪れて、川島 宙シェフが織り上げるコースを思う存分に堪能したいものです。

都内にいながら、奈良県を体感できる「奈良まほろば館」を訪れてみませんか?
古からの歴史が織りなす食文化に触れる事ができます。

奈良まほろば館 
住所:東京都港区新橋1丁目8-4 SMBC新橋ビル1F・2F

1F Shop / Cafe & Bar
TEL: 03-6263-9656
営業時間: 11am-8pm

2F TOKi (Restaurant & Bar)

TEL: 03-6228-5665


火曜~土曜 Lunch: 12pm-3:30pm (LO 1pm), Dinner: 6pm-10pm (LO 7:30pm)
定休日: 月曜日、日曜日、お盆、年始

Bar       
火曜~土曜 12pm-3pm (LO 1:30pm), Dinner: 5:30pm-10:30pm (LO 9pm)
定休日: 月曜日、日曜日、お盆、年始